5.弁理士の勤務先は特許事務所か企業知財部のほぼ二択

弁理士のキホン
トンボ
トンボ

弁理士になったら、どんなところで働くんですか?

カブト
カブト

ほとんどの弁理士は、特許事務所か企業の知財部のどちらかで働いているよ。

弁理士の勤務先ってどんなところか、みなさんご存知ですか?

弁護士なら法律事務所、税理士なら税理士事務所というように、弁理士なら特許事務所に勤務するのが一般的です。いや、『一般的でした』と言うべきかもしれません。

最近は、特許事務所ではなく、企業の知財部に勤務する弁理士(企業内弁理士)もかなり増えています。知財部員が弁理士資格を取得し、そのまま知財部に残るというケースが多いようです。

この記事では、弁理士の主な勤務先である特許事務所と企業の知財部がどういうところか、そしてそれぞれの転職事情についてお話したいと思います。

特許事務所とは?

特許事務所とは、産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)を取得するための特許庁への手続きの代理業務(権利化業務)を主とする事務所です。

下の記事で説明したように、弁理士資格は権利化業務が許される唯一の資格なので、特許事務所でクライアントの代理人として仕事をするのは弁理士の本来の姿と言えるでしょう。

1.弁理士とは何かを簡単に説明すると?
トンボ 弁理士って一体何をするんですか? カブト 特許権や商標権を取るためのお手伝いをしているんだよ。 便利屋とよく間違われる弁理士(涙)。弁理士とは一体何者なのでしょう? ...

特許事務所の業務は、出願業務や中間処理といった権利化業務が中心となりますが、それ以外にも、異議申立て、無効審判、鑑定、訴訟といったより専門的な業務もあります。また、日本国内だけでなく、外国での権利化業務もあります。

いずれの業務にしても、パソコンに向かって書類を作成している時間と、文献や資料を読んで検討している時間が圧倒的に長いです。

特許事務所の主要業務である出願業務と中間処理については、下の記事で詳しく書いていますので参考にしてください。

4.弁理士の主要業務(明細書作成と中間処理)を具体例で説明してみると?
トンボ 弁理士の仕事内容について具体的に教えてください! カブト じゃあ、簡単な具体例を交えながら、できるだけわかりやすく説明するね。 弁理士の主な仕事は、特許権などの産業財産...

特許事務所で働くのに弁理士資格は必要か?

多くの弁理士の勤務先が特許事務所であることは事実ですが、では、特許事務所で働くのに弁理士資格は必須なのでしょうか?

答えは「ノー」です。

実は、弁理士資格を持っていなくても、『特許技術者』として特許事務所で働くことは可能です。『特許技術者』とは、弁理士資格を持っていない技術系所員のことです

特許技術者として特許事務所に転職・就職し、その後、弁理士資格を取得するというのが、弁理士を目指す場合の最も一般的なキャリアパスです。

6.弁理士と特許技術者の違いは?弁理士になることのメリットは?
トンボ 弁理士でなくても特許事務所で働けるんだったら、苦労して弁理士になる意味はあるんでしょうか? カブト そこをどう考えるかは、人それぞれかなぁ。 下の記事でも書いたように、...

特許事務所への転職

特許事務所への転職・就職は、理系のバックグラウンドがあれば、未経験者でも比較的簡単です。

「文系出身だと特許事務所に入れない」というわけではありませんが、特許業務の担当者としてわざわざ文系の人を採用しようという事務所は少ないです。

意匠グループや商標グループがあるような大手特許事務所であれば、文系の人でも意匠業務や商標業務の担当者として採用されやすいでしょう。

すでに述べたように、弁理士資格がなくても特許事務所に入ることはできますので、その点はご安心ください。

ただし、弁理士資格を持っていたほうが、採用されやすかったり、弁理士手当が支給されることもありますので、弁理士資格がないよりはあったほうがよいでしょう。

知財部経験者は特許事務所でも優遇されると思いますが、明細書作成の経験がないと転職後に苦労すると思います。

特許事務所に新卒で入所する人はごくまれで、メーカーや研究所などに勤めていた人が20代後半~40歳くらいで転職してくるケースが多いです。

特許事務所での仕事は基本的にどこでも同じですので、特許事務所で経験を積めば、歳をとっても特許事務所間の転職は比較的しやすいです。

特許事務所への転職活動で注意したいこと
トンボ 特許事務所への転職活動ってどうやったらいいんだろう・・・ カブト 心配しなくても、一般的な転職活動とそんなに違いはないよ。 特許事務所への転職・就職を考えている人の中に...
特許事務所の求人を探すのに押さえておきたい転職サービスと転職サイト
トンボ 特許事務所の求人ってどうやって探したらいいんですか? カブト じゃあ、今日は特許事務所の求人の探し方について説明するね。 特許事務所の求人を探す方法は、企業の場合と比べ...
トンボ
トンボ

弁理士でなくても特許事務所で働けるというのは朗報だ!

知財部とは?

知財部とは『知的財産部』の略で、企業の知的財産を取り扱う部署です。

企業知財部は、特許事務所にとって主要なクライアント、すなわち、『お客様』です。

つまり、同じ弁理士でも、企業内弁理士であるか、特許事務所勤務であるかによって、立場が180度変わるということです。

知財部の業務は、権利化業務、侵害調査、他社とのライセンス交渉、訴訟などの係争対応というように多岐にわたります。

ちなみに、権利化業務といっても、知財部員が自ら出願書類や意見書・補正書などを作成することはあまりありません。

知財部での権利化業務とは、開発現場での発明の発掘、先行技術の調査、発明者と特許事務所との間での窓口業務、特許事務所が作成した書類のチェックなどです。

知財部の仕事は、どちらかと言うと、発明者、特許事務所、他社知財部など、いろんな相手とのやり取りが多く、対人業務の要素が強いようです。これは、デスクワークが多い特許事務所との大きな違いです。

知財部で働くのに弁理士資格は必要か?

結論を先に書くと、知財部で働くのに弁理士資格は必要ありません。特許庁への手続きを誰かに代わって代理するわけではないからです。

知財部員が弁理士資格を取得するメリットは、箔がつく、資格手当が支給される、試験勉強の内容が実務に活かされる、弁理士同士の横のつながりが広がる、といったところでしょうか。

企業内弁理士の扱いについては、企業間での差が非常に大きいです。昇格の際に弁理士資格を優遇するような企業もあれば、弁理士の登録費用や会費すら払ってくれない企業もあります。

特許事務所勤務の場合は、とりあえず弁理士を目指すということで間違いはないと思いますが、知財部勤務の場合は、弁理士資格を取得する意義についてよく検討すべきです。

知財部勤務であれば、弁理士試験よりも知財部の実務に近い内容が問われる『知的財産管理技能検定』のほうが有益かもしれません。

知財部への転職

知財部への転職に関しては、弁理士資格があれば優遇されることもありますが、必須条件とされることはほとんどありません。

弁理士資格の有無よりも重視されるのが、知財部または特許事務所での勤務経験、そして年齢です。特に年齢が重要でしょう。

企業はベテランよりも若手を求めていることが多く、30代前半くらいまでなら比較的転職しやすいですが、それを超えるとかなり厳しくなってきます。

特許事務所と知財部間では相互に転職可能ですが、一般的には、特許事務所から知財部へ転職するほうがハードルが高いです。

トンボ
トンボ

知財部だったら弁理士資格はあまり意味がないのか・・・

弁理士の独立開業

最後に独立開業について少しだけ。

弁理士資格の魅力は、何と言っても自分で特許事務所を開業することができるということでしょう。

独立開業を夢見て、弁理士を目指している人もいるかと思います。そういう人は、知財部ではなく、特許事務所での実務経験を積むようにしましょう。

昨今の弁理士数の増加や規制緩和で、特許事務所間の競争は厳しくなり、「安定を求めるなら特許事務所よりも知財部」という風潮が強くなっています。

しかしながら、特許事務所を開業した場合に必要となるのは、特許事務所の業務を遂行する能力であり、知財部勤務からいきなり独立開業というのは無理があります。

独立開業を目指しているのに知財部に転職するというトンチンカンなことをしないように気を付けましょう(笑)。

まとめ

弁理士の働き方について、大事なポイントをまとめておきます。

弁理士は特許事務所で働くのが一般的であるが、最近は企業知財部に勤務する弁理士(企業内弁理士)が増えている
特許事務所に転職する場合、弁理士資格はあれば好ましいが、それよりも理系のバックグラウンドがあることのほうが重要である。
企業知財部に転職する場合、弁理士資格は基本的に必要なく、知財部経験や年齢が重視される。
トンボ
トンボ

独立開業って夢がありますね!

カブト
カブト

昔に比べると独立開業も難しくなってるみたいだけどね。

『弁理士のキホン』の次の記事はこちらです。

6.弁理士と特許技術者の違いは?弁理士になることのメリットは?
トンボ 弁理士でなくても特許事務所で働けるんだったら、苦労して弁理士になる意味はあるんでしょうか? カブト そこをどう考えるかは、人それぞれかなぁ。 下の記事でも書いたように、...