弁理士って高給取りなんですよね?
残念ながら弁理士というだけで高給取りにはなれないよ。
「弁理士って儲かるの?」
みなさん一番気になるのは、ここですよね。
ネット上では、厳しい現実を訴える記事もあれば、景気のよさそうな話も転がってます。
さて、実態はどうなんでしょうか?
現役弁理士の私が、特許事務所勤務の弁理士の年収について建前ナシで赤裸々にお話したいと思います。
弁理士の年収を試算してみる
弁理士の年収をざっくりと試算してみます。ここでは、細かいパラメータを省略して、
「年収=年間売上×還元率」
で年収が求められると仮定しましょう。
年間売上を計算するための前提条件は以下の通り。
- 週に明細書作成(特許出願)を1件、中間処理を1件のペースで処理
- 売り上げは明細書作成が1件25万円、中間処理が1件8万円
すると、週の売り上げが33万円、年間売上は約1,500万円となります。
還元率は…、設定が難しいです(苦笑)。
一昔前は「年収の3倍稼げ!(=還元率33%)」なんて言われていましたが、最近は仕事の単価も下がり、1件にかかる時間も長くなる傾向にあります。
このため、還元率33%だとブラック特許事務所扱いされるかもしれません。
ここでは、まあまあ良心的な特許事務所を想定して還元率50%とします。
すると、年収は1,500万×50%=750万円となります。
『年収750万円』
みなさんの感想はいかがでしょう?
もし、弁理士資格を取得しただけでいきなり750万円もらえたら、かなりオイシイ仕事に間違いありません。
しかし、この試算で前提とした「週に明細書作成1件、中間処理1件」という処理件数は、簡単にこなせるものではありません。
この処理件数を安定的にこなせるようになるのは、素質があっても3~5年はかかると思います。何年やってもできない人もいます。
また、それだけの仕事が安定的に受注できるのかという問題もあります。
つまり、素質のある人が経営の安定しているまあまあ良心的な特許事務所に転職して3~5年後に得られる年収が750万円ということです。
弁理士は、決してオイシイ仕事ではありません。
弁理士の年収の推移は?
特許事務所に入ったばかりの新人弁理士(特許技術者も含む)の場合は、年収300~500万円ぐらいです。
最初はほとんど処理件数をあげられないことを見越して、低めでのスタートとなりますが、それ以降は売り上げに応じて差がつきます。
上で試算したように3~5年ぐらいで年収700~800万円に手が届く人もいれば、年収500万円前後で足踏みする人もいます。
試算条件以上のペースで仕事をこなしたり、単価の高い内外業務や外内業務を多く担当すれば、年収1,000万円を目指すことも可能です。
ただし、処理件数を増やして年収1,000万円に到達できるのは、よほど効率よく仕事のできる人か、深夜残業も休日出勤もいとわない一部のタフな人に限られます。
弁理士で年収1,000万円以上を目指すならば、ある程度の規模の特許事務所でリーダー職を目指すのが一番確実でしょう。
さらに、パートナーまで昇進すれば、年収1,500~2,000万円も夢ではありません。
年収1,000万円を超える弁理士もそれなりにいるけど、弁理士全体の平均年収は600~700万円あたりに落ち着くというのが現実です。
平均で見ると思ったより低いんだな。
弁理士なんてなるもんじゃない?
弁理士になるには、難関の弁理士試験に合格しないといけません。技術にも精通している必要があるし、英語力だって求められます。
その割には、弁理士は決して「高給取り!」って感じではありません。
リーダー職になっても、大企業の課長職と同等か少しいいぐらいでしょうか。福利厚生や退職金制度まで考えると、大企業に完敗です。
この記事を読んで、「弁理士なんてなるもんじゃない」と思った人もいるかもしれません。
しかし、仕事には年収以外の要素もたくさんあります。
弁理士という職業の評価は、結局のところ、みなさんが何を重視するかによって変わります。
弁理士になってよかったこと
個人的には、弁理士になって、特許事務所で働いて、よかったと思うこともたくさんあります。
特許事務所は小さな組織なので、ややこしい人間関係や、無駄な会議や行事などがほとんどなく、仕事に集中しやすいです。
チームワークよりも、個人プレーの世界なので、マイペースで仕事がしたい人には向いています。
ときどき、人間関係がドライすぎると感じることもありますが、定時退社や休暇取得がしやすい環境はお気に入りです(笑)。
また、売り上げに応じて年収が決まるというのは、厳しい側面もありますが、やったらやった分だけ報われるというのは公平だとも言えます。
クライアントから信頼や評価を得たときには、弁理士としてのやりがいや自負を感じます。「先生」と呼ばれるのも嫌いじゃありません(笑)。
私にとって弁理士の一番の魅力は、実力がつけば身軽に生きていけるという点。
いわゆる手に職なので、能力さえ高めればどこの特許事務所でも働くことができ、普通のサラリーマンよりも職場にしがみつく必要性が低いと感じています。
弁理士にもいろいろな魅力はあるので、年収だけに着目するのではなく、自分の価値観や性格なども踏まえて検討してみてください。
弁理士の年収を増やすには?
さて、弁理士として年収を増やすには、どうしたらよいのでしょうか?
私が重要と考えるのは以下の3点です。
- 最初にしっかりとした指導を受ける
- 内外業務や外内業務を多くこなす
- 年功序列の特許事務所を避ける
最初にしっかりとした指導を受ける
まず、最初にしっかりとした指導を受けることが大切です。
明細書作成や中間処理のちゃんとしたノウハウを初期に吸収できれば、あとは処理速度を高めていけば売り上げを伸ばすことができます。
しかし、最初に変なクセがついてしまうと、時間ばかりかかってまともな明細書や意見書が書けなくなり、クライアントからの信頼も失ってしまいます。
修業期の間は、自分のスタイルを作り上げようとするよりも、優秀な弁理士や特許技術者の書き方を素直に真似してみることをオススメします。
内外業務や外内業務を多くこなす
内外業務や外内業務は、国内業務よりも単価が高く、効率よく売り上げを伸ばすことができるので、年収アップのためには欠かせません。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
国内業務と比べると、多少の英語力が必要だったり、外国の特許制度を知っておく必要があるなど、業務としての難易度は上がりますが、積極的にチャレンジしたいところです。
年功序列の特許事務所を避ける
特許事務所は、基本的に成果主義の世界ではありますが、実際には年功序列の要素も取り入れられていることが多いです。
年功序列が色濃い特許事務所を選んでしまうと、いくら売り上げを伸ばしても、経験年数が浅いうちは大きな年収アップは望めません。
年収アップを望むなら、評価制度の骨格が年功序列となっている特許事務所は避けましょう。
転職エージェントをうまく利用しよう
とは言え、上記3つの条件を満たす特許事務所を自分で見つけるのは容易ではありません。
そこでオススメなのが、特許事務所の求人案件を多く抱える転職エージェントを利用することです。
私が知っている中で一番頼りになるのはリーガルジョブボードです。
リーガルジョブボードは、弁理士専門のエージェントが特許事務所に対して事前ヒアリングを行っているので、
- 新人への教育体制
- 内外業務や外内業務の比率
- 成果主義と年功序列の程度
といった求人票には記載されていない有益情報を教えてもらえる可能性が高いです。
転職で失敗したくない人は、転職エージェントを利用することを検討してみてください。
以上、参考になれば幸いです。
成果主義って厳しいイメージがあります。
確かにそういう一面もあるけど、年収アップを望むなら成果主義が色濃い事務所のほうがオススメだよ。