文系の弁理士が理系の特許業界で生き抜くためには?

能力・適性
トンボ
トンボ

弁理士は理系の資格と聞きましたが、文系の人はいないんですか?

カブト
カブト

文系弁理士で活躍している人もいるけど数は少ないね。

弁理士の仕事で圧倒的に多いのは、特許に関する権利化業務で、技術を理解できる能力が必須となります。そのため、理系が有利であることは、以下の記事で述べた通りです。

1.弁理士とは何かを簡単に説明すると?
トンボ 弁理士って一体何をするんですか? カブト 特許権や商標権を取るためのお手伝いをしているんだよ。 便利屋とよく間違われる弁理士(涙)。弁理士とは一体何者なのでしょう? ...

でも中には、文系出身で弁理士を目指している人もいると思います。この記事では、「文系でも弁理士としてやっていけるの?」という疑問にお答えしたいと思います。

現役の文系弁理士の方が不愉快に思う点もあるかもしれませんが、一個人の意見ですので、気を悪くされないようにお願いします。

文系弁理士の割合は約2割

最初に、文系と理系の弁理士の割合を見てみましょう。

弁理士の文理の割合

文系弁理士の割合は約2割。確かに理系が圧倒的に多いですが、「思ったより文系の人もいるんだなぁ」という印象です。

この2割の文系弁理士の中には、『特許業務ができる文系弁理士』『特許業務ができない文系弁理士』がいると思います。

ですが、これから弁理士を目指す文系の人は、特許業務にも積極的に取り組むようにしたほうがよいと思います。以下、その理由をお話します。

意匠・商標専門の弁理士になるリスク

文系出身の人には、「技術はわからないから、意匠・商標専門の弁理士になりたい」という人が少なくないでしょう。

確かに、意匠・商標の仕事だけであれば、技術に携わる必要がないので、文系の人でもやりやすいと思います。特に判例の読み込みが得意な文系の人であれば、商標業務でその強みを生かせるかもしれません。

ただ、意匠・商標専門の弁理士になることは、以下のようなリスクがあると思います。

意匠・商標業務は市場が小さい

日本における特許出願は年間約30万件であるのに対し、意匠出願は約3万件、商標出願は約10万件です。

しかも、意匠・商標業務の単価は特許業務よりも安いです。特許1件が25万円、意匠1件が10万円、商標1件が5万円と仮定すると、市場を計算すると次のようになります。

特許の市場:25万円×30万件=750億円
意匠の市場:10万円×3万件=30億円
商標の市場:5万円×10万件=50億円

特許に比べていかに意匠・商標の市場が小さいかがわかります。

さらに、特許は拒絶理由通知が出されることが多いため中間処理でも稼げますが、意匠・商標の拒絶理由通知は少なめなので、市場の差はさらに広がります。

つまり、意匠・商標業務だけで稼ごうとすると、小さな市場から多くの仕事を取ってこなければならず、競争が厳しくなるのは必然です。

大手特許事務所でしか働けなくなる

意匠・商標業務だけで大きく売り上げを伸ばすことは困難なため、意匠・商標専門の弁理士を抱える余裕があるのは、ほぼ大手の特許事務所のみとなります。

あなたにオススメなのはこんな規模の特許事務所
トンボ 特許事務所に転職するなら大きな事務所のほうがいいですか? カブト ケースバイケースだけど、初心者なら大手のほうが無難かもしれないね。 一言に特許事務所と言っても、弁理士...
大手特許事務所はさっさと辞めるべき?
トンボ 転職するならやっぱり大手の特許事務所かな〜 カブト 未経験者なら小さい事務所より大手がいいかもね。 これまでいくつかの記事で、「未経験者なら大手特許事務所がオススメ」と...

大手特許事務所のみとなると転職の選択肢が限られてきます。仮にこぢんまりとした特許事務所で働きたいと思っても、意匠・商標専門だとそれはなかなか叶わないでしょう。

また、独立開業を目指すとしても、特許業務をせずに意匠・商標業務だけで生計を立てるのは至難の業だと思います。

意匠・商標業務はAIに代替されやすい

これからAI(人工知能)の普及が本格化します。

「人間の仕事がAIに取って代わられる」なんて話をちらほら聞くようになってきましたが、弁理士もこの流れに無縁ではいられないでしょう。

これは個人的な予想にすぎませんが、弁理士業務の中では、商標業務が真っ先にAIに代替されるのではないかと予想しています。その次が意匠業務と思っています。

意匠・商標業務では「2つの意匠(商標)が似ているかどうか」という類否判断を行う必要があるのですが、こういった比較処理はAIが最も得意とする処理だからです。

もちろん、特許業務がAIに代替される可能性もありますが、それは順番的には最後になると思います。

それに、特許業務がAIに代替されるときには、世の中の仕組みそのものが大きく変わっていると思うので、「今から過剰に心配してもしょうがない」と私は割り切ることにしています。

弁理士の仕事はAIに奪われてしまうのか?
トンボ 弁理士の仕事がAIに奪われるかもしれないという話を聞きましたが本当なんですか? カブト 一部の業務はそうなる可能性はあるけど、弁理士の仕事すべてがAIに奪われることはないと思うよ...

特許業務もできる文系弁理士を目指そう!

以上のように、意匠・商標専門の弁理士を目指すのはリスクが大きいのではないかと思います。

もちろん、意匠や商標の専門家となって、その分野で名を馳せることも不可能ではありませんが、かなり険しい道のりであるのは間違いありません。

文系出身者が特許業界で生き抜くためには、「意匠・商標業務を任され、かつ、分野限定でもいいから特許業務ができる弁理士を目指す」というのが堅実だと思います。

特許業務でも、日用品や機械系の簡単な案件なら、勉強しながら十分対応できます。まったくできないのと、一部案件だけでもできるのでは大違いです。

それに、特許専門の弁理士は意匠・商標の仕事を避けたがる傾向がありますので(笑)、意匠・商標業務ができる人は、大手以外の特許事務所でも重宝されると思います。

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そもそもなぜ文系弁理士を目指すのか?

最後に、余計なおせっかいですが、文系出身で弁理士を目指している人は、そもそもなぜ弁理士を目指しているのでしょうか?

文系であれば、難易度は高くなりますが弁護士を目指すという手もありますし、その他の士業も文系が主流のものがほとんどです。

「あえて弁理士を目指さなくてもよいのでは?」という素朴な疑問が湧いてきます。

このような質問を投げかけられて、明確に答えられない人は、厳しい言い方になりますが、弁理士を目指すことを考え直したほうがいいのかもしれません。

トンボ
トンボ

やはり文系は厳しそうですね・・・

カブト
カブト

一般論としてはそうなるね。ただ、文系・理系にかかわらず、結局は本人次第だと思うよ。