特許事務所に転職するなら大きな事務所のほうがいいですか?
ケースバイケースだけど、初心者なら大手のほうが無難かもしれないね。
一言に特許事務所と言っても、弁理士一人の個人事務所から弁理士だけで数十人を超える大手事務所までさまざまです。
この記事では、特許事務所の規模によってどういう特徴があるのか、また、転職・就職するならどの程度の規模の事務所がオススメかについてお話します。
特許事務所の規模別の特徴
特許事務所を規模だけで語るのは無理がありますが、規模によってある程度共通の傾向が見られるのも事実です。
ここでは、大手特許事務所(所員数100名以上)、中堅特許事務所(所員数20~100名程度)、小規模特許事務所(所員数20名未満)とざっくり分類したうえで、それぞれの特徴を見ていきます。
大手特許事務所の特徴
所員が100人を超えるような大手特許事務所となると、一等地の立派なビルに事務所を構えていることが多いです。
「高い家賃を所員に還元したほうがいいのでは?」と思うことも(笑)。
大企業のクライアントを複数抱えており、弁理士および特許技術者は、クライアントごと、あるいは、技術分野ごとにグループ分けされています。
指導の質や仕事の負荷は、どのグループに配属になるか、誰が上司になるかによる差が大きく、実際に入ってみないことにはわかりません。
これが大手特許事務所に入る一番のリスクだと思います。
特許グループのほかにも、商標グループ、意匠グループ、翻訳グループ、図面グループ、調査グループがあることが多いです。
大企業からの大量の依頼を大人数で処理するために、業務の分担やフローが細かく決められています。勤怠管理もしっかりなされており、企業の雰囲気に近いと言えます。
大手特許事務所は事務所そのものがつぶれることはそうそうないと思いますが、それと所員の待遇が安定しているかはまったく別の話です。
大企業から大量の依頼をもらう代わりに単価が低いことが多いので、見た目の華やかさほど実際に働いている所員が潤っている感じはあまりしません。
小規模特許事務所の特徴
所員数が20名未満の小規模特許事務所は、パッとしないビルの一室が職場であることも多く、華やかさは皆無です(失礼!)。
所長の目が全員に行き届き、所長の人柄や価値観があらゆるところに反映されています。
小規模の事務所では、仕事がどうこうと言う前に、所長との相性が重要です。
所長が尊敬できる人物、指導に長けた人物ならこんなに恵まれた職場はないと思いますが、所長との相性が合わないなら地獄です。
人数が少ないために仕事が細分化されておらず、いろんな経験をすることができます(いろんな仕事をさせられます)。
例えば、特許業務だけでなく意匠や商標の業務もこなしますし、特許図面も自分で作成するのが普通です。弁理士や特許技術者が事務手続きや英文レターを作成することも。
小規模特許事務所に関する情報は手に入りにくいので、イチかバチかの要素が大きくなる点に注意が必要です。
中堅特許事務所の特徴
所員が数十名程度の中堅特許事務所は、大手特許事務所と小規模特許事務所の中間的な特徴を持っています。
大手特許事務所と比べると、良くも悪くも組織としては緩い感じになり、仕事の進め方なども各人でまちまちなことが多いです。
中堅特許事務所では、大企業のクライアントがいくつあるかが、経営の安定度に直結します。
大きなクライアントがいくつかに分散されていればいいですが、1、2社に依存しているような事務所だと、そのクライアントに何かあったときに一気に経営が傾くというリスクがあります。
あなたに向いている特許事務所は?
特許事務所の規模ごとの特徴をお話しましたが、「自分はどの規模が向いているのか?」と悩んでいる人も多いと思います。
ここでは、いくつかのタイプごとにオススメの特許事務所を提案します。
特許業務未経験の人
特許業務未経験であれば、ある程度規模の大きな特許事務所(大手か中堅で大きめのところ)が無難です。
どのグループに配属になるかによって差は大きいと言いましたが、事務所全体として組織化が進んでいるため、新人を教育する体制がそれなりに整っていることが多いです。
また、未経験者だと年収300万円台も普通にあり得ますが、大手であれば500万円前後の年収を出してくれるところも見つかりやすいです。
所長が懇切丁寧に指導してくれる小規模特許事務所も未経験者にはいい選択肢ですが、そういう事務所は所員の定着率も高く、そもそも求人を見つけるのが至難の業です。
特許業界未経験の人は、ブラック特許事務所を避けるためにもリーガルジョブボードなどの専門の転職エージェントを利用することを強くオススメします。
独立志向が強い人
「将来は独立開業したい」という気持ちが強い人には、独立の際に有益な経験が積める小規模特許事務所をオススメします。
独立するためには、特許業務だけでなく意匠や商標の業務経験もあったほうがベターですし、事務処理の流れなども知っておく必要があります。
小規模特許事務所では、雑務も含めていろいろな仕事をする機会が多いので、独立開業に向けた修行場所としてはうってつけです。事務所を引き継がせてもらえる可能性もあります。
ワークライフバランスを重視する人
ワークライフバランスを重視するなら、中堅特許事務所が一番バランスを取りやすいと思います。
小規模特許事務所だとマンパワーが弱いので、仕事量の変動に振り回されやすくなります。そのため、突発的に忙しくなることが多く、長期休暇などの予定が立てにくいかもしれません。
かと言って、大手特許事務所まで大きくなると、慢性的に忙しい事務所が多いので、プライベートの時間が少なくなる傾向があります。
ただし、どんな規模の事務所であっても、「休みが取れるか」や「早く帰れるか」は雰囲気によるところも大きいですので、社風(所風?)を見極めることが大事です。
また、ワークライフバランスを実現しようという自分の意志も重要です。
とにかく稼ぎたい人
「バリバリ仕事をして稼ぎたい!」という人は、大手か中堅の特許事務所で実績を上げるのが一番手っ取り早いでしょう。
それなりの忙しさは覚悟しないといけませんが、独立開業のようなリスクをとらずに年収1,000万超えを目指すなら妥当な選択肢です。
ただし、年収1,000万円を本気で目指すなら、処理件数をガンガン増やして年収アップという方法よりも、グループリーダーなどの管理職に就くのが確実です。
初心者の僕はとりあえず大手かな…。
規模は1つの目安でしかないから、面接での印象や自分の直感を大切にね。