就職するならやっぱり大手の特許事務所かな。
未経験者なら小さいところより大手がいいかもね。
これまでいくつかの記事で、「未経験者なら大手特許事務所がオススメ」と書いてきました。
未経験者に大手をオススメする理由をまとめると以下のとおり。
- 教育体制がそれなりに整っている
- 未経験者でも年収500万円前後もらえる可能性がある
- ブラック特許事務所を回避しやすい
- ほかの特許事務所への転職がしやすい
しかし、経験が長くなるほど大手特許事務所のメリットは徐々に薄れていき、むしろデメリットのほうが際立ってくる可能性があります。
大手特許事務所を3年で辞めた私が、大手特許事務所のデメリットに焦点を当ててみました。
大手特許事務所は大企業に似ている
大手特許事務所では、大量の仕事を大人数で効率的にこなす必要があるため、組織としての色合いが濃いです。
仕事は細分化され、管理系統が明確に存在し、一所員の裁量は小さくなります。
このため、大手特許事務所はいろんな点において大企業に似ています。
大企業の雰囲気が苦にならない人や慣れている人にとっては、大手特許事務所の居心地は悪くないかもしれません。
しかし、私が思うに、特許業界を目指す人ってむしろ大企業の雰囲気が苦手な人が多いと思うんですよね(笑)。
「チームワークが苦手」とか「体育会系はイヤ!」とか「必要以上に管理されたくない」とか…。
そういう大企業の雰囲気が苦手な人たちは、大手特許事務所を窮屈に感じる可能性が高いと思います。
大手特許事務所は下請けの要素が強い
大手特許事務所は、大手メーカーなどのクライアントからの大量の依頼をさばけるようにするため、多くの所員を抱えて大手になったという経緯があります。
出願件数が増えていたリーマンショックまでは、大手特許事務所と大手クライアントの思惑が合致し、両者の依存関係がうまく機能していました。
しかし、リーマンショック以降は、出願件数の減少、単価の低下、クライアントからの品質要求という三重苦に苦しむ大手特許事務所は、下請けと化している印象が強いです。
大量の安くて手間のかかる仕事ばかり。だけど、所員を大勢抱えているために薄利多売でも受注せざるを得ない。その結果、所員が疲弊しているという状況です。
ちょっと悪いところを強調しすぎかもしれませんが、大手特許事務所で働く知人からは実際そういう話を耳にします。
同じ大手でも事務所によって差はありますが、大手電機メーカーや自動車メーカーなどをメインのクライアントにしているところはこの傾向が強そうです。
✔総合電機(件数多いが単価安い、品質要求高い)
— カブト弁理士@転職相談ブログ (@kabuto_benrishi) January 22, 2020
✔自動車(品質要求高い)
✔遊技機(明細書長い、でも単価はよい)
✔プリンタ(品質要求高い)
上記各業界は一般的に厳しめのクライアントが多いように思う。
しかし、そういうクライアントに今まで鍛えてもらったのも事実です。
大手特許事務所では年収が増えない?
大手特許事務所でリーダー職やパートナー職の弁理士となれば、仕事も責任も大変になる分、確実に年収1,000万円を超えることができるでしょう。
しかし、大手特許事務所の一般職の弁理士や特許技術者の待遇がいいかと言えば、必ずしもそうではありません。
というのも、大手特許事務所は一等地の立派なビルにオフィスを構えていることも多く、家賃という固定費も馬鹿になりません。
また、売り上げに直接寄与しない間接部門(事務や総務など)の人員が増えるため、弁理士や特許技術者への還元率は低くなりがちです。
そして、上の人たちは高給を得ているので、そう簡単に辞めたりはしません。
つまり、大手特許事務所では、一部の高給取りとその他大勢の安く働いてくれる人たちという構図になりがちで、しかも上のポジションになかなか空きは出ません。
このため、大手特許事務所で処理件数をこなせるようになっても、役職のつかない弁理士や特許技術者でいる限りは、年収が意外に伸びないという現象が起こりやすいのです。
大手特許事務所は修業の場としては最適
以上、大手特許事務所のデメリットについて書きましたが、あくまでも大雑把な傾向を捉えたにすぎません。
もちろん同じ大手特許事務所でも事務所間によって差はありますので、あまり凝り固まったイメージを持たないように気をつけてください(笑)。
また、繰り返しになりますが、未経験者にとっては大手特許事務所は実務能力を上達させる修行の場として最適です。
- 教育体制がそれなりに整っている
- 未経験者でも年収500万円前後もらえる可能性がある
- ブラック特許事務所を回避しやすい
- ほかの特許事務所への転職がしやすい
大手特許事務所でしっかり実力をつけ、上司チェックなしで明細書が書けるぐらいのレベルになったら、転職を検討してもいいでしょう。
不満がなければそのまま大手特許事務所に居続けてもいいでしょうし、大手特許事務所勤務という経歴をぶら下げてよりよい待遇を求めて転職することも余裕です。
その域に達するまではがむしゃらにがんばりましょう!
大手特許事務所もいいことばかりではないんですね。
どんな規模の特許事務所でも一長一短だね。