【読者からの質問】文系弁理士が特許業務を目指すのは非現実的?

弁理士の仕事
トンボ
トンボ

久しぶりに読者さんからの質問ですね。

カブト
カブト

今回は文系出身の弁理士さんからいただいた質問に答えたいと思います。

当ブログの読者のAさんから以下のような質問をいただきました。

はじめまして。

私は、弁理士をしている者です。
貴ブログの「文系の弁理士が理系の特許業界で生き抜くためには?」の記事を拝見し、ご質問・ご相談があり、今回ご連絡をさせて頂きました。

私は文系学部出身であり、現在、特許事務所で主に商標の業務をしております。
私は数学、化学、物理など特許技術に関係する知識はなく、特許業務は一切行ったことはありませんが、一応特許にも興味はあります。
また、商標関係の業務のみでは、少しばかり範囲が狭いのではないかと懸念をしております。

このような文系出身の者が、特許技術の勉強をして特許業務を目指すのは、実際のところ非現実的なのでしょうか。
また、文系出身の者が特許関係の仕事をする場合、どのような技術分野をやるのが一般的なのでしょうか。

突然このようなお問合せをし、大変恐縮ですが、もし可能でしたらお返事をいただけないでしょうか。
何卒宜しくお願い申し上げます。

Aさんは、弁理士として特許事務所で商標業務をされていますが、特許業務も目指すべきか悩まれています。

文系の弁理士が理系の特許業界で生き抜くためには?
「理系が主流の弁理士業界で文系出身でもやっていけるの?」という質問に対して、私なりの答えをまとめてみました。少し厳しめの意見かもしれませんが、弁理士を目指すか迷っている文系の人の参考になれば幸いです。

こちらの記事でも書いたように、私は「文系弁理士も特許業務ができるようになったほうがいい」という考えです。

今回の質問に対する回答もこの考えがベースになりますが、もう少し深掘りしたいと思います。

商標業務だけではますます厳しくなる

異論もあるかもしれませんが、弁理士のメイン業務は何といっても特許業務です。

2018年の実績では特許出願が年間31万件、商標出願が年間18万件でした。1件当たりの平均報酬額を特許出願が約25万円、商標出願が5万円とすると、

特許の市場:775億円(=25万円×30万件)
商標の市場:90億円(=5万円×18万件)

と、圧倒的に特許の市場のほうが大きいです。

実際に弁理士に依頼される件数や中間処理での手数料まで考えると、この差はもっと開くと思われます。

商標業務しかできないとなると、775億円の市場をあきらめることになり大きな機会損失です。

また、商標業務に特化することの今後の懸念としてAIの台頭があります。

弁理士の仕事はAIに奪われてしまうのか?
すでに特許翻訳に関してはAIの存在感が増してきている昨今。本丸の弁理士業務もAIに取って代わられるのでしょうか?AIに関してはまったく素人ですが(笑)、私なりの見解をまとめてみました。

過去の事例をもとに比較・判断を行うことが多い商標業務は、特許業務以上にAIに代替されやすく、人間弁理士に残されるパイはますます少なくなると思います。

すでに、ToreruCotoboxのようなITやAIを駆使した商標出願サービスも出てきており、こういった傾向は止まることはないでしょう。

さらに、商標専任の弁理士を抱えることのできる特許事務所は限られており、今後転職をする際に選択肢が狭まることも弱点と言えるでしょう。

以上のような事情から、私は「文系弁理士であっても、商標業務だけではなく特許業務にチャレンジしたほうがいい」と思います。

特許業務の適性は文系・理系関係ない

明細書作成や中間処理といった特許業務は、

  • 技術を理解するという第1段階
  • 発明の本質を理解するという第2段階

の2段階に分けることができます。

弁理士の仕事内容とは?『明細書作成』ってこんな仕事です
弁理士の仕事において、『明細書作成』と呼ばれる業務はもっとも基本的かつ重要なものです。明細書作成とはどんな業務なのか、クレームって何なのか、どんな能力が必要なのか、について説明します。
弁理士の仕事内容とは?『中間処理』ってこんな仕事です
弁理士の仕事において、『明細書作成』と並ぶ主要業務と言えば『中間処理』です。中間処理とはどんな業務なのか、また、中間処理をこなすにはどんな能力が必要なのか、について説明します。

第1段階をクリアする上で、技術の素養が必要であることは否定できず、この点において文系出身者は理系出身者より不利であるのは事実です。

この点については、「これから技術を勉強していくんだ!」という気概で乗り越えるしかないでしょう(笑)。

しかし、特許業務を適切に遂行するためには、第1段階をクリアするだけでは不十分で第2段階をクリアする必要があります。

第2段階をクリアしないと、クライアントを満足させるクレームを書いたり、説得力のある意見書を書いたりすることはできません。

第2段階をクリアするためには、情報の整理能力や論理構成力が重要であり、文系・理系による適性の優劣はありません。

第2段階の前提となる第1段階で文系の人にビハインドがあったとしても、第1段階さえ乗り切れば第2段階で理系弁理士を逆転することだって可能です。

また、第1段階においても、勉強が必要なのは文系出身者だけでなく、理系出身者でも新しい分野や難しい案件では勉強しないといけません。

文系弁理士が特許業務を目指すことは、ちっとも非現実的なことではありません。

実際に私の知り合いでも、特許業務をこなしている文系弁理士は何人もいるので、安心してください。

技術分野は日用品、IT・AI分野、機械系がやりやすい

では、「具体的に文系でもやりやすい技術分野は?」と聞かれれば、日用品、IT・AI分野、機械系がやりやすいのではないかと思います。

日用品はモノが単純なだけに、従来技術とどう差別化を図るか、どの特徴を発明として捉えるかという第2段階が難しいことがありますが、第1段階の技術の理解は比較的簡単です。

IT・AI分野は最先端の分野で難しそうに思えますが、データ(情報)の入力、出力、処理を理解してブロック図が書ければ、それで技術内容の理解は大方済んだことになります。

物事を整理しながら理解するのが得意であれば、理系の素養がなくても取り組みやすい分野だと思います。

機械系の案件はわかりやすい図面があれば理解しやすいと思いますが、機構が複雑になると一気に難易度が増すので要注意です。

文系の人でもやりやすそうな技術分野を一応挙げてみましたが、結局は案件次第というところが大きいです。

所長や特許グループのリーダーに、日ごろから「私でも出来そうな特許案件があればやらせてもらえませんか?」とお願いしておくのがいいかもしれません。

慣れている人は案件の難易度も察しがつくので、お任せするのが得策だと思います。

特許も商標もできれば怖いものなし

以上、文系弁理士・商標弁理士のみなさんが気分を害される記載もあったかもしれませんが、あくまでも私見なのでお許しください。

特許業務しかできない弁理士も多い中、商標も特許もできる弁理士が重宝されることは間違いありません。独立もしやすくなるのではないでしょうか。

技術の勉強では苦労することもあるかもしれませんが、それは理系の人間でも同じことなので、ともにがんばりましょう!

トンボ
トンボ

僕も商標も特許もできる弁理士を目指したいです!

カブト
カブト

じゃ、トンボ君に商標は任せるからよろしく!(笑)