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弁理士はAIに取って代わられるのか?

弁理士はAIに取って代わられるのか?
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トンボ

弁理士の仕事がAIに奪われるかもしれないという話を聞きましたが本当なんですか?

カブト

一部の業務はそうなる可能性はあるけど、弁理士の仕事すべてがAIに奪われることはないと思うよ。

「AI(人工知能)の発達によって職がなくなる」という論調の記事を見かけることが多くなってきました。

弁理士も例外ではありません。

先日、あるシンクタンクによって「弁理士は92.1%という高い確率でAIに代替される」という解析結果が示されました。

一弁理士として不愉快に思っていたところ、この解析結果に対して弁理士会の副会長が反論する記事が取り上げられていました。

さて、弁理士はAIに取って代わられてしまうのでしょうか?

目次

AIに取って代わられそうな弁理士の業務は?

まずは、AIに取って代わられそうな弁理士の業務を見ていきたいと思います。

ちなみに、私はAIに詳しくありません(笑)。

「AIは膨大なデータを用いて学習しながら最適解を見つけ出すことが得意」という程度の理解でこの記事を書いていますので、ご了承ください。

調査業務

AIに代替されそうな弁理士の業務として真っ先に思い浮かぶのは調査業務です。

膨大な量の特許公報が、テキストデータとしてすでに用意されているので、それを利用して調査を行うのはAIにとってそれほど難しくないと思います。

特許調査に限らず、商標調査や意匠調査でも同様です。

AIの性能が向上していけば、むしろ人間よりも見落としが減少し、調査精度が向上する可能性もあると思います。

明細書の一部作成

将来的に、AIが明細書の一部を作成することは可能だと思います。

例えば、技術分野などの適当な条件を入力すれば、条件に合致した特許公報からAIが適当な文章を抽出して、明細書の一部を作成することもあり得るかもしれません。

ちなみに、特許業界では「明細書作成」と言い方をよくしますが、これには明細書の作成だけでなく、特許請求の範囲(「クレーム」とも呼ばれます)の作成も含まれています。

ここでAIが作成可能と言っているのは、あくまでも明細書そのものの一部のことです。あとでお話するように、クレームの作成は、AIには難しいと考えています。

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商標・意匠の類否判断

商標業務では、「商標Aが商標Bに似ているか否か」という類否判断を行うことがあります。同じく、意匠についても類否判断というものがあります。

比較処理はAIの得意とするところなので、AIが類否判断をこなせるようになる可能性は高いと思います。

例えば、AIなら数秒で「商標Aは商標Bに78%の確率で類似します」なんて解析結果を出すことができるようになるかもしれません。

話が少し逸れますが、下の記事で、商標・意匠専門の弁理士を目指すのはリスクがあるという話をしました。AIの台頭も大きな脅威になるかもしれません。

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トンボ

弁理士、ヤバいんじゃないですか?!

カブト

まあまあ、そう結論を急がないで(笑)。

AIに取って代わられなさそうな弁理士の業務は?

では、反対にAIに取って代わられなさそうな弁理士の業務には、どのようなものがあるのでしょうか?

クレーム作成

明細書の一部ならAIでも作成できそうだという話をしましたが、それは既存の特許公報の一部を流用して作成するというイメージにすぎません。

しかし、クレームの作成はそう簡単にはいきません。

権利取得して意味のあるクレームを作成するためには、権利範囲の広さ、権利行使のしやすさ、競合他社が回避しにくい権利になっているかなど、様々な切り口から検討する必要があります。

そのようなノウハウは弁理士の頭の中にはあるものの、それを言語化してデータにするというのは私にはまだ想像ができません。

また、特許出願するに当たって、クライアント自身、どういう権利を取ればいいのかはっきりしていないことがよくあります。

我々弁理士は、特許面談でクライアントの要望を聞き出し、実際に聞き出せたこと以外にも口調や表情などからクライアントの想いを読み取ったりもします。

クレームの作成においては、最初に紹介した記事で、弁理士会の副会長が『対人スキル』と言っている類のコミュニケーション能力が特に必要なのです。

AIが人間と同等のコミュニケーション能力を習得するできるのは、まだまだ先の話だと予想しています。

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中間処理

中間処理では、審査官が拒絶理由通知で述べていることを理解し、審査官に「なるほど」と思わせる意見書を書くことが必要です。

しかし、拒絶理由通知は決してわかりやすい日本語ではなく、行間を読まなければならないこともしばしばあります。審査官による個人差も大きいです。

また、意見書では、同じことを言うのでも、言い回しや文章の組み立てによって、印象が大きく変わります。

審査官という人間を説得させるには、どういう文章がいいのか、弁理士が毎回苦心するところです。

このように、中間処理に必要な「行間を読む」とか「説得力のある文章を書く」といったファジーなスキルを、AIが習得するのはかなり難しいと考えています。

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弁理士が不要となる日はくるのか?

以上のように、一部の弁理士業務はAIに取って代わられる可能性があるものの、クレーム作成や中間処理といった弁理士の核心的な業務は大丈夫ではないかと考えています。

しかし、AIがどれくらい進化するのか、私の想像力が及ぼないところも大いにあります。

ひょっとしたら、弁理士業務のすべてをやってのける『AI弁理士』が、そのうちできるかもしれません。

ただし、そのときには、進化したAIによって、そもそも世の中の仕組みや仕事の意味合いが大きく変わっていると思います。

弁理士が必要かどうかは、その中のごくごく一部のちっぽけな話にすぎません。

そんなときがくるまでは、むしろAIをうまく利用して作業効率を上げながらクレーム作成や中間処理の腕を磨いておくことが、弁理士にとって重要なのではないでしょうか。

トンボ

AIによって仕事は減るかもしれないけど、弁理士という職業自体はなくならないということですね。

カブト

僕はそう思っているよ。仮に弁理士そのものがAIに取って代わられるときが来れば、潔く引退させてもらうよ(笑)。

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