『産業財産権』について教えてください!
了解!
上の記事で、「弁理士は産業財産権を取得するための特許庁への手続きに精通した専門家である」というお話をしました。
そして、「産業財産権とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の総称である」ということまでは説明しました。
この記事ではもう少し突っ込んで、個々の権利がどういうものなのか見ていきます。また、権利を取ればどんないいことがあるのかについても少しだけ触れておきます。
詳しくは弁理士試験の勉強で学んでいただくとして(笑)、ここでは、産業財産権の概要を把握してもらえればと思います。
特許権、実用新案権、意匠権、商標権の比較
産業財産権には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つがあります。
それぞれの権利の保護対象や存続期間については、以下の表や図をご覧ください。
権利 | 規定法 | 保護対象 | 存続期間 |
---|---|---|---|
特許権 | 特許法 | 発明 | 出願日から20年 |
実用新案権 | 実用新案法 | 考案(小発明) | 出願日から10年 |
意匠権 | 意匠法 | 意匠(デザイン) | 出願日から25年 |
商標権 | 商標法 | 商標(文字やマークなど) | 登録日から10年(更新可能) |
順番にもう少し詳しく説明します。
特許権・実用新案権
特許権も実用新案権も、『技術的なアイデア』を保護対象としている点で共通していますが、保護対象が少しだけ異なります。
特許権は『技術的なアイデアのうち高度なもの(発明)』を保護対象としているのに対し、実用新案権は『比較的簡単な小発明(考案)』を保護対象としています。
特許権を取得するためには、出願された発明が、特許法に規定されている要件をクリアしている必要があります。
一例を挙げると、産業に利用できるか(産業上の利用可能性)、今までにない新しいものか(新規性)、容易に思いつくことはできないか(進歩性)などがあります。
一方、実用新案権に関しては、出願された考案について実体的な審査は行われません。その分、権利としては特許権よりも弱いものとなっています。
このため、特許権を取得するのは難しそうな場合、早期の権利化を目指す場合、宣伝効果のためにとりあえず権利が欲しい場合などに、実用新案権を取得するケースが多いです。
特許権を取得するための手続きについては、こちらの記事を参考にしてください。
意匠権
意匠権は『物のデザイン(意匠)』を保護対象としています。
意匠権を取得するためには、出願された意匠が、意匠法に規定されている要件をクリアしている必要があります。
意匠の審査では、デザイン的に優れているかどうかが問題となるわけではなく、今までに同じ意匠がないか、似たような意匠がないかがポイントとなります。
商標権
商標権は『商品やサービスを認識するための文字やマークなど(商標)』を保護対象としています。
商標権を得るためには、出願された商標が、商標法に規定されている要件をクリアしている必要があります。
創作性を保護する特許権、実用新案権、意匠権とは異なり、商標権は商標を使用することで蓄積された『業務上の信用』を保護することを目的としています。
このため、商標権は繰り返し更新すれば、永久的に権利を維持することができます。存続期間が経過したら消滅する特許権などとは大きく異なる点です。
商標権だけ少し毛色が違うんだ。
産業財産権を取得したら独占可能
産業財産権は、権利者に『独占排他権』を与える非常に強い権利です。
例えば、ある発明に対して特許権が設定されると、特許権を持っている人(特許権者)だけがその発明を独占的に製造したり販売したりすることができるようになります。
仮に、第三者が特許権者の許可なくその発明を製造したり販売したりした場合には、特許権者は損害賠償や製造・販売の差止めを求めて訴えを起こすことができます。
また、特許権者は、特許権を売ったり、第三者に特許発明の製造や販売を許可してライセンス料を得たりすることもできます。
このように非常に強い権利である特許権は、自分が持てば強い武器になりますが、第三者に取られると大きなダメージになりかねません。実用新案権、意匠権、商標権でも同じことが言えます。
このため、企業活動を行う際には、発明や商標などの知的財産を権利化して、自社の事業を強化したり、他社から訴えられるリスクに備える必要があるのです。
そして、そのお手伝いをするのが弁理士の仕事というわけなのです。
ありがとうございます!だいぶイメージがつかめました。
それならよかった!